“View Finder”を通して、テーマパークの新たな楽しみ方の”Style”を見つける、『Find My Style』。今回は、志摩スペイン村 パルケエスパーニャを、ティルトレンズで撮り歩きます。
プロローグ
テーマパーク。非日常の中の最も日常側の時間、だと思っています。確かにそこに行くことは特別だし、毎日そこで時間を過ごすことができたらいいけれどそういうわけにもいかない。それは海外旅行とも同じだけれども、例えば言葉が通じなくなってしまうことや計画を立てないと出かけられないことの心配は必要ない。それでも十分すぎるほど刺激的な出会いが約束されている。それがテーマパークなんじゃないかなあ、と。逆に日常の中の最も非日常な時間、ってなんだろう?、と考えると浮かぶのは、ネオン街。煌く夜景。見ず知らずの人が無限に行き交う街だと思います。毎日通りかかるけれども、毎日少しずつ変化している景色、そこではどんな出逢いがあるか、いや何もないかもしれないい…。
さて、少し余談が過ぎましたが、今回の私のパルケエスパーニャへの旅は、ネオン煌く東京都心のバスターミナルから始まりました。少し前に生活拠点が変わってからというもの、夜行バスで出掛けるならそこがとても便利になっていたのです。どうしても余ってしまう夜行バスの出発前の小一時間。いつもならあまり目を向けない、深夜でも営業している大型の家電量販店が、私にとっての待合室。いつもの癖で通りかかったカメラコーナー、そこで出逢ってしまったのです。
夢現の”夢”
ティルトレンズ、というレンズがあります。本来はレンズを上下に動かして撮像面と光軸を意図的にずらし、例えば見上げた建物がしぼんでいくパースを補正する「シフト」と、レンズを斜めに動かしてピント面の出来上がり方をずらすことで全体にピントを合わせやすくする「ティルト」が合わさり、アオリ撮影というテクニックを作り出しています。
一方で今回出逢ったレンズにはティルト機構があるのみ。完全に使い手の感性でピント面を意図的に変えることだけに集中したレンズです。
このレンズを通して見える風景に思いを寄せていると、夢の中にいる気分になりました。光だけがどこからともなく差し込み続けていて影はほとんどなく、ただ明るいだけとも違うけれどもどこか幻想的な風景。後から思い返す夢って、特にこういうヴィジュアルをしていることが多いように感じます。もしかしたらそれは夢の中では見たいものを無意識が選んでいるからかもしれない…前後方向以外のピントを選ぶことは、夢を見ることに近いのかもしれない、と思って撮った写真たちでした。
夢現の”現”
しかし、ローキーで影を入れ込みながら撮り始めて、全く違う印象を受けるようになってきたのです。急に目に映る風景に時間軸と現実味とを感じはじめ、特に過去への強い意識が芽生えました。
今回の”View Finder”
Lensbaby Composer Pro II Sweet 35 は、アメリカからクリエイティブなレンズラインナップを発信し続けるLensbaby社の製品。”Sweet”に流れるようなボケ味が印象的な35mm F2.5のレンズユニットが、ティルトユニットに組み込まれています。
エピローグ
今回は、志摩スペイン村パルケエスパーニャを「夢と現」をテーマに撮り歩きました。モチーフとなったスペインの名所や名物がはっきりとしているのが特徴のパルケエスパーニャ。思っている以上に歴史・文化的背景がしっかりとあって、どんな撮り方をしても応えてくれる撮りごたえのあるパークです。それだけに、テーマをどこに置くかは悩んだのですが、少し寝かせてから考えてみるとこういうことだったのかな…?と思い始め、あっという間に筆も進んでしまいました。なお、今回の掲載内容は新型コロナウィルスによる臨時休園前の内容となります。さて、次はどんなStyleを探しに行きましょうか…。