志摩スペイン村パルケエスパーニャで、2020年2月より公演されているキャラクターショー「パティオ デル カント〜ダルシネアの秘密の花園〜」。
スペインの文化を紹介するショーが人気のステージ「コロシアム」の新たな演目のそれぞれのシーンの魅力をご紹介します。
パティオ祭りとは?
「パティオ祭り」とは、スペイン南部、アンダルシア地方の都市コルドバで5月の数週間の間にだけ行われる、「パティオ」と呼ばれる住居の中庭を飾り付けて美しさを競う祭りで、世界無形文化遺産にも登録されており、100年近い歴史があります。
パティオは元々、暑く乾燥した気候の中で快適に過ごすために作られたもので、住居の中央部分がくり抜かれたような、日陰をとれる中庭のスペースのことです。そんなパティオは、住居の構造上、普段外から見ることはできない場所。しかし、美しい白壁を背景に、花や絵皿で飾られた伝統的なパティオの美しさを讃えようと、1920年前後に地元でコンクールを開くようになって以来、住む人々だけのものだった「秘密の花園」は広く楽しまれるようになっていきました。
コロシアムに作られた「パティオ デル カント〜ダルシネアの秘密の花園〜」の舞台も、伝統的なパティオに欠かせない白壁と青い花瓶のコントラストや、美しく咲く花々といった要素を表現したものとなっています。
オープニング『ダルシネアの秘密の花園』
ショーの舞台となるのは、ガート村に住む、パルケエスパーニャの人気者、ダルシネアのパティオ。(CASA DULCINEA=ダルシネア家)美しい花々が咲き誇るこの場所の門が、年に一度のパティオ祭りに向けて開かれようとしています。
住民たちが最後の花の手入れを終えて、いよいよパルケエスパーニャの仲間たちを迎え入れます。“そう あれから一年 時が流れた春夏秋冬”“パティオ祭り 閉ざされた扉の鍵が今開く”
みんなを迎え入れたダルシネアが“花たちが歌う12ヶ月の物語 そう ここが私の花園”と歌い上げると、そのパティオの美しさにみんなは驚きを隠しきれない様子です。
それにしてもなぜこんなにたくさんの花が咲き誇っているのでしょうか?ダルシネアは、彼女のパティオに1年を彩る季節の花々を飾り、花言葉を添えてみんなの誕生日を祝いたい、と考えていたのです。ダルシネアは、誕生花について歌い始めます。
1月、スペイン語で<Enero> 誕生花はカーネーションで、花言葉は「飾らない心」
2月<Febrero>の花はフリージア、「あどけなさ」「純潔」
3月<Marzo>の花はチューリップ、「博愛」「思いやり」
4月<Abril>の花は桜、「優美な女性」
そしていよいよパティオ祭りの5月です。果たして誰の誕生日を、どんな花でお祝いするのでしょうか…?
5月<Mayo>『チョッキーのバースデイパーティー』
5月生まれは、いたずら好きのチョッキーが誕生日。“ハッピーバースデイ・トゥ・ミー!5月生まれ!フェリス・クンプレアニョス!(Feliz cumpelaños=お誕生日おめでとう)”と自ら歌う姿がお茶目です。
彼の誕生日は、ラテンアメリカの国々で広く親しまれている遊びをしながらお祝いします。16世紀はじめにスペインの人々がメキシコなどに広めたとされる伝統的な遊び「ピニャータ」は、目隠しをして吊るされた装飾を叩き割り、見事に割れたら中に入っているお菓子などのプレゼントが貰えて、現在では様々なお祝いごとの時に親しまれています。そんな5月の誕生花はすずらん。花言葉は「純粋」「純潔」。
6月<Junio>『雨のローズガーデン』
続いて祝う誕生日は、6月6日生まれのフリオの誕生日。ダルシネアのそばにいる吟遊詩人のフリオは、傘を持ってお洒落にタップダンスを決めながら歌い上げます。“まるでミュージカルみたい ロマンスの始まりはいつも雨 君と歩くバラの小道”6月の誕生花はバラ。「愛」「美」という花言葉を、愛する人と歩くローズガーデンに例えて歌います。
シーンの始めの歌い出しにある“スペインでは雨は主に平野に降る”という一節は、ミュージカル『マイ・フェア・レディ』にも登場する“The rain in Spain stays mainly in the plain.”へのオマージュでしょうか。雨降る中でも、その季節らしい楽しみ方を見つけて歌にする姿はまさに吟遊詩人のフリオらしい、といえるでしょう。
7月<Julio>『サンチョの夏休み』
7月は、ドンキホーテ家の従者の子、サンチョの誕生日。陽気なロックンロールのビートが聞こえてくると、夏らしい装いに着替えたパルケエスパーニャの仲間たちが登場します。“夏休みだよ 何して遊ぼう 長い休みを家族で過ごそう”一般的にスペインの夏休みは7月ごろから9月中旬までしっかりと2ヶ月程度取るものだと言われており、とても長い夏休みを取る、というイメージそのままの歌詞になっています。「これって7月の誕生花と何か関係あるの?」と問いかけるダルシネアにも、「なんにも関係ないです〜」とおどけて見せるサンチョ。“チリンギートで冷たいドリンク 何もしないで海を眺めてる”そんなのんびりとしたスペインの人々の一面を垣間見れる楽しいシーンです。
ちなみに「チリンギート」とは、海沿いなどで営業している軽食やドリンクが手に入る屋台のこと。日本の海の家のようなものから、スタイリッシュなレストランのようなものまで様々です。そうそう、7月の誕生花はユリで、「純潔」「無垢」といった花言葉があるそうですよ。
8月<Agosto>『アンダルシアの恋』
フラメンコギターのイントロと、カスタネットのリズムが聞こえてきます。8月は、パティオの主ダルシネアの誕生日。舞台が誕生花の向日葵に埋め尽くされると、「飾りきれないほどのひまわりに囲まれて、私はいつか、勇敢で優しい人に出会うの」とダルシネアが囁きます。
清楚で青春のさわやかな花のイメージが強いひまわりですが、花言葉には「愛慕」「崇拝」「熱愛」と、熱く盛り上がる一夏の恋を予感させる言葉が並び、情熱的な雰囲気。同じ花でも、違う文化から見たときにはまた違った美しさを見せているのかもしれません。
スペイン語でヒラソル(Girasol)と呼ばれる向日葵。ヒラ(Gira=廻る)、ソル(Sol=太陽)、という単語から成り立ったその名前。廻る太陽のように美しく舞い廻るフラメンコとともに歌われる情熱的な愛を表現したシーンは、最もスペインらしさを感じられるシーンかもしれません。
9月<Septiembre>『俺様のパティオが一番』
ローボ村の領主で先祖が偉大な魔法使いであったアレハンドロは9月生まれ。どうやらパティオ祭りに参加しているのはダルシネアだけではないようで…彼も先祖代々受け継がれたスタイルでのパティオづくりに余念がないようです。
“代々伝わる我が家の家訓 一番にならなきゃ意味がない”誕生花に「華麗」「優雅」「気品」という言葉を持つダリアに祝福され、どうやら自分をモデルにした植栽を飾るほど自信家の彼。果たして彼のパティオは果たして村一番のパティオとして選ばれるのでしょうか…?
10月<Octubre>『ドンキホーテのハロウィン』
ドンキホーテ村の領主で、勇敢で優しい騎士であるドンキー。スウィングジャズにのせてハロウィンのコスチュームで仲間を連れて登場します。誕生花はガーベラで、花言葉は「希望」「常に前進」。勇敢な騎士らしい言葉が似合う、ナイトのコスチュームをまとっています。
“Trick or treat スペイン語では Truco o trato”と歌詞にあるように、スペイン語でも同じように表現できるハロウィンのイベントをみんなで楽しみます。
11月<Noviembre>『紅葉の赤にこころは燃える〜闘牛士の歌〜』
かつては船に乗り大海を旅したトロは、今ではドンキホーテ村で大工をしています。力持ちだけど普段は静かな彼の情熱が歌い上げられるシーンです。誕生花はシクラメン、花言葉は「はにかみ」「清純」「きずな」。
闘牛士のコスチュームで登場した彼は、スペインでも地域によっては見られるという真っ赤に燃える紅葉の赤に思いを馳せながら歌います。“燃える山 紅葉のような赤き思い”“その瞬間 嵐のような歓声が巻き起こり 勇者の祭りが始まる”
12月<Diciembre>『Feliz Navidad』
クリスマスのベルの音が聞こえてきます。そう、12月は「神様の誕生日」。みんなでお祝いします。スペイン語で「メリー・クリスマス」の意味を持つ“Feliz Navidad”の曲にのせて、パルケエスパーニャの仲間たちが勢揃い。1970年に発表されすっかりクリスマスのポップソングとして定番になったこの曲。ラテンのリズムにのせて「メリー・クリスマス、繁栄と幸せある1年が訪れますように、心から願っています」とシンプルなメッセージを繰り返すあたたかな雰囲気の曲がショーでも用いられています。
そして、12月の誕生花はポインセチア。「祝福する」「幸運を祈る」「聖なる願い」と、まさにクリスマスのイメージそのままの花言葉が並んでいます。
フィナーレ
1年を彩る季節の誕生花と花言葉にのせてパティオで繰り広げられたショーも、1年分の季節を巡っていよいよフィナーレです。チョッキーが受け取ったパティオ祭りの結果発表の便りには、果たして誰の名前があったのでしょうか?
誕生花と花言葉を通して、パルケエスパーニャの仲間たちやスペインの文化について、今まで知らなかった物語が「秘密の花園」を舞台に歌われてきました。一年に一度のお祭りは、パティオの美しさを讃えるだけでなく、そこに行き交う人々の思いが讃えられているお祭りなのです。“毎日どこかで 綺麗な花が咲いている 毎日どこかで 素敵な夢が生まれている”花に込められた、言葉をも超える美しい想いが飾られたパティオでは、招かれたすべての人が夢を見るような気持ちで過ごすことができるのでしょう。
“一年365日毎日が誰かの誕生日 花たちが歌う12ヶ月の物語 そう ここはみんなの秘密の花園”閉ざされた秘密の花園の扉の向こうに一度踏み入れれば、いつもそこに咲き誇る花たちがいて、毎日訪れる誰かの誕生日を祝ってくれていることに気づけます。直接伝えることが難しくても、そっと想いを花に添えてくれる花言葉のように、誰かを祝う気持ちが心の中にあれば、いつでもみんなの花園が待っていてくれるのでしょう。
公演情報
上演回数:1日2回
上演時間:約25分
上演場所:コロシアム
オリジナルCD「パティオ デル カント〜ダルシネアの秘密の花園〜」が園内ショップ「アスタ ラ ビスタ、ファンタシア」にて発売中。価格は2,500円。