2020年7月17日に開業した「カワスイ 川崎水族館」。
川崎駅前の商業施設「川崎ルフロン」9階・10階にあり、日本初の既存商業施設内での水族館です。
館長の鈴木正孝さんに単独インタビューを行いました。
水族館の素人だからこその目線と取り組み
鈴木館長は旧富士銀行へ入行以来21年にわたり金融商品の営業に従事、2010年にエンターテインメント業界へ転身し、キッザニアにてスポンサー開発や団体営業に携わります。そして2020年にカワスイ 川崎水族館長兼マーケティング部長に就任しました。
プライベートでは、小学校へインフラメンテナンスの重要性や興味を持ってもらうための出前授業の実施、フラッグフットボールクラブコーチなど精力的にボランティア活動を行うなど、異色ともいえる経歴の持ち主です。
―――運営会社の社長や副館長は長年水族館に関わってきた方ですが、鈴木館長ならではの「カワスイ」の特徴はありますか。
鈴木館長:水族館は素人なので、ここで働いている人たちの中で1番知識がないくらいなのですが、逆に言うと客観的に見られるんですね。こういうところが面白いだとかつまらないだとかが言えると思います。どうしても専門家ってその道のプライドがありますし、のめり込んじゃうと周りが見えなくなっちゃったしますし、本当に動物を命がけで守る人たちなので。とはいえ命を粗末にするわけではないですけれども、ビジネスでもあるので、そういったところの線引きが僕ならではできることなんじゃないかなと思っています。
―――鈴木館長が具体的に変えた部分・変えたい部分はありますか。
鈴木館長:実は私は会社に入ってまだ数ヶ月なんです。なのでこれから変えていきたいなと思っています。施設についてはあまり口出しするつもりはなくて、外への発信ですね。例えば川崎市との連携協定を結んだりとか、どちらかというと社会貢献活動の方で活動を広げていこうかなと思っています。
経歴を生かし小学校向けカリキュラムを開発
カワスイではアジアやアフリカ、アマゾンなど世界のあちこちのゾーンがありますが、中でも印象的なのは入館してすぐの多摩川ゾーンです。
多摩川ゾーンでは、地元を流れる多摩川の上流・中流・下流それぞれの水槽があり、それぞれの地域を魚だけでなく水質や石まで再現しています。
―――多摩川の展示では教育への活用も予定されているのでしょうか。
鈴木館長:小学校の3年生の社会科では、地元を調べるというカリキュラムがありますし、5年生ではメダカを育てるというカリキュラムがあります。例えば地元を調べるときに多摩川に行くといっても、実際は河口付近は危ないので行けていないんです。川が深いので落ちたら溺れちゃいますから。そういう所で、カリキュラムの一環として使っていただきたいなと思っていますし、それに合わせた事前事後学習プランも出来上がっています。事前に自分が調べたこと、例えば中流に生息している動物や植物、石の形とかを事前に調べて見ていましょうというような形にしています。地元の公立小学校の先生方に、キッザニア自体に関係があった親しい先生が何人かいらっしゃって、その先生とこんなプログラムどうですかという形で監修していただいて、ほぼできあがっているような状態です。実際に公立の小学校でもお問い合わせいただいて、授業日数が足りない中でもカワスイに行こうかなという相談をいただいています。
何かを感じて、自分で行動してほしい
水族館には水槽内にいる魚を紹介する「魚名板」がよく設置されていますが、カワスイには魚名板がなく代わりにQRコードが貼られています。
―――QRコードを使い、直接魚の名前を表示しないのにはどのような意図があるのでしょうか。
鈴木館長:何かを感じてもらいたいというところに重点を置いています。やっぱり魚名板とか置くとそっちに目がいってしまうと。そうじゃなくて、そこの水辺を感じてもらいたいので。多摩川ゾーンも植物は本物ですし、なんでこんな植物があるんだろうと思ってもらうだけでもいいと思っています。魚はもし興味があったら自分で調べてもらいたいんです。今は調べる方法はいくらでもありますし、興味があったら自分で行動してみる調べてみるということを期待しているので、覚えなさいとか調べなさいとか押し付けることは一切したくないなと思っています。
都市型ならではの新しい水族館の姿
―――なぜ商業施設内に250tもの水槽を持つ水族館が作れたのでしょうか。
鈴木館長:元々この場所にはスポーツジムがあって、プールがあってかなりの水を蓄えられる構造になっていたんです。それが撤退するということで、せっかく水が蓄えられるからと、水族館のコンペがあったと聞いています。その中でうちをご指名していただいたということです。
―――川崎駅前という立地で滞在時間や滞在スタイルはどう想定されていますか。
鈴木館長:水族館の滞在時間は1時間半を想定しています。例えば買い物帰りとか食事をした後とか、ついでに来てもらって気楽に過ごしてもらえたら嬉しいです。もしかしたら何回も通っているうちに新たな気づきがあるかもしれないです。それがあればありがたいなと思っています。
―――都市型水族館ならではの取り組みはありますか。
鈴木館長:「AOW」というレストランとか「こもれびカフェ」とかがあるんですけども、水族館の中に本格的なレストランがあるのは珍しくて、普通は外注で全く別会社に委託するケースが多いです。ただうちは会社としては別々なんですけれども、実質グループ会社なので連携しているんですね。将来的には貸し切りにして、水族館もレストランも貸し切りという形で、夜9時夜10時までやっていますので、例えば結婚式の二次会を水族館でとか、そういうことも受け入れていこうかなと思っています。そういう意味では新しい取り組みになるかなと思っています。
ソーシャルディスタンスを計算して入館者数を管理し、現在の混雑状況を随時表示するなど、様々な対策を取りながらのスタートとなったカワスイ。
空調は6分に1回全ての空気が入れ替わる仕組みになっており、安心して来館してほしいと語っていました。