ハウステンボスは、新社長として、オリエンタルランド執行役員の髙村耕太郎氏を招聘。社長だった坂口克彦氏は会長になる人事を、2023年10月1日(日)に行いました。これを受け、髙村社長と坂口会長が出席する社長取締役就任挨拶会見を、2023年10月3日(火)に実施しました。
髙村社長に後を託せるのは光栄
はじめに、坂口会長が挨拶しました。
4年4ヶ月社長をやって色々な改革をしてきたと振り返る中で、1年前にHISがハウステンボスの経営権をPAGに売却した際、PAGの伊藤共同代表から「一回り若い社長を招聘したい」と言われていたと明かし、社長交代は既定路線だったと説明。
むしろ社長交代に時間がかかったと言い、「大変良い人材を探してきていただいた」と喜びました。
髙村社長について、新卒でオリエンタルランドに入社して企画畑を歩いてきたと紹介。40代で執行役員をされ、経営戦略という大きな仕事をしてきた方に後を託せるのは光栄なことと語りました。
期待が確信に変わったのでは
PAGは数年間で数百億円の投資を行うと発表しており、髙村社長の招聘もPAG伊藤共同代表によるもの。坂口会長は、PAGの資金力、髙村社長のノウハウ・経営力が加わって、相当素晴らしいテーマパークになるのではないかとと期待を寄せました。
1年前、PAGの経営になった際、何度も心配の声をかけられ、その度に「安心してください、期待してください」と言ってきたと振り返り、今回で期待が確信に変わっていくと思うと発言。
会見の最後にも、期待が確信に変わったのではと話し、新体制に自信を見せました。
髙村社長「“テーマパーク屋”一筋」
続いて髙村社長が挨拶。
新卒でオリエンタルランドに入社し、約25年半勤務した、“テーマパーク屋”一筋でやってきた人間だと自己紹介をしました。
OLCでは企画管理畑。会社全体の中長期の戦略を立てて、プロジェクトベースの成長戦略を推進しながら、また中長期の戦略を立てて新しいプロジェクトを作っていくという役割を担い、全体の財務と経営管理を統括も行っていたと説明しました。
OLCの執行役員という立場を離れ、ハウステンボスの社長になることを決意した理由を4つ挙げました。
テーマパークは非常に足の長い産業だとし、PAGというファンドが長期的な視点を持っていることが伝わってきたことで非常に信頼が持て一緒に仕事ができると思ったこと。
マーケティング支援として株式会社刀が携わっており、刀の戦略はもちろん、それを実行プランに落とし込む能力の高さが自分の経験を補ってくれる心強さ。
ハウステンボスのスタッフが非常にモチベーション高く働いている点。
コロナ禍を経て、日本・世界の視点で観光産業を元気にしていくための新天地になることを挙げました。
TDR経営管理の経験はハウステンボスでもしっかり出せる
自身の経験については、テーマパークは時間軸が非常に長い業態だとし、一つひとつの飲食や商品を見ていくと比較的単純だが、それを組み合わせてやっていくのが特徴だと説明。
その上で、テーマパークの経営管理、お金を管理してどこに使うのが効率的かを長年やってきた経験から、テーマパーク事業の限られたお金をどういう形で使って管理をしていくと最終的なゲストや経済的な価値につながるのかをPDCAを回していくのかについて、そこは東京ディズニーリゾートとは全く環境が異なるハウステンボスでもしっかり出せると思うと話しました。
ハウステンボスの価値向上への施策
テーマパーク・テーマリゾートとしての価値をしっかり高めてほしいというのが、PAGから社長へのミッション。
ハウステンボスの現状について、個々のサービス自体は良いものの、全体の整合性や統一感、全体のパワーに変えられていないと感じていると説明。シームレスにそれぞれのサービスを一個のテーマの元に体験してもらえるようなテーマパーク・テーマリゾートにしていく、そういう価値を上げていくと展望を語りました。
ハウステンボスの強みは、広い敷地の中で、ヨーロッパの非常にテーマ性の高いファシリティを持っているのは、テーマパークをやっていく上で非常に魅力的だと指摘。有効活用できる敷地があり、拡張の可能性も考えていると話しました。
一方で、敷地が広い分維持費がかかるものの、これだけ良いファシリティを元々備えているのは大きな魅力だとしました。また、オープンから30年以上たち老朽化している建物もある中で、しっかり利益を出しながら老朽化を迎えている部分を改善していくことも目標として掲げました。
2050年へのビジョンと中長期戦略を繋ぐ
中長期の観点で、日本の観光産業は、これからすごく大きな転換点を迎えていくと思っていると指摘。
人口減少の中で来園者も従業員のなり手も少なくなっていく中で、大きな事業構造の転換が迫られる時期になってくるという予想を示しました。そして、2040〜50年にもハウステンボスが良い形で存在し成長していくには、どういった形でビジネスモデルの転換を図っていくべきなのか、集客構造の側面と、働いていく人の側面で変革していくと発言。
2050年から描いた、バックキャストした新しいビジョンと、刀の森岡氏らが発表した中長期戦略をしっかり繋いでいくのが自分の大きな役割だとしました。
坂口会長も髙村社長の視点を称賛
坂口会長は、2050年の視点を持つ髙村社長について、まだ1日会議をしただけとしつつ絶賛。
会長自身はHIS入社前にユニ・チャームで経営企画の本部長をやっていたと経歴を語り、社長時代にテーマパーク経営ではマーケティング力と組織開発を中心にやってきたと振り返りました。
前任のHIS澤田社長のことは天才経営者と評し、天才ゆえトップダウンでやっていたものの、自身が社長になり組織として力をつけることに注力。その中で5年先くらいは考えていたとしつつ、ユニ・チャーム時代と異なり10年先・20年先のような中長期は考えてられていなかったと語りました。
その中で、髙村社長は、経営戦略のビジョンからバックキャストして何をやっていくかの思考体系になっていることが、1日で感じたと評しました。
会長は九州全体の観光発展にも注力
坂口会長は、社長から会長になるにあたりどう役割を変えるべきか、JR九州の唐池恒二氏に相談したところ「社長をどうサポートするのか考えなさい」と教えを受けたことを明かしました。
また、外との関係をもっと強化することをやるようアドバイスを受けたとして、長崎県観光連盟や佐世保の観光評議委員会の理事に就任。長崎空港からハウステンボス単体で訪れる人は全体の13%だとし、8割の客は長崎市や九十九島など九州の観光地を周遊していることから、一緒になって九州の観光を強化していくことが大事だと思っているとし、ハウステンボスが観光を成長発展する役割を担っていきたいと今後の意欲を見せました。
アクセントポイントを入れていく
会見の中で何度も指摘したのは、ハウステンボスで一日楽しむ中で、ポイントになる体験が少ないという点。
ポイントになる、体験にアクセントを与えられる施設が足りないと指摘し、歩いている中で数分に一回はあっと思うような拡張をしたいと展望しました。
具体的には、帰る時に「今日はあれ楽しかったね」という話をするときに、大きなエンターテイメントを観れて「あれは可愛かったね、よかったね」「あのアトラクションほんと面白かったね」というものが帰る時にひとつふたつ残るような体験を入れていくと説明しました。
アクセントポイントになるようなアトラクションやエンターテイメントを入れていくと発言。
テーマパーク・テーマリゾートは、ゲストがどういう時間感覚で過ごしているかは重要だと思っていると指摘し、ハウステンボスはゆっくり時間を使えるのは魅力の一つだと説明。その上で、アトラクションやエンターテイメントだけでなく、食事の環境を象徴的に良くするやり方もあると選択肢を語りました。