富士急ハイランドは、大型コースター「ZOKKON」を、2023年7月20日(木)にオープンします。
12年ぶりに登場する新コースターの魅力を、乗車レポと担当者へのインタビューを交えてお伝えします。
「ZOKKON」の名前に込めた意味
「ZOKKON」開発担当の、企画部 企画開発グループ次長 宮尾哲也さんは「富士急ではたくさんのコースターを作ってきたが、ジェットコースターの原点に立ち帰り、コースターの楽しみとは何かを追求した。その結果、スリルだけでなくスピード感と爽快感を味わえるジェットコースターを開発することになった」とプレス試乗会で話しました。
数値上のスペックの高さを求めるだけでなく、実際に乗ってみて気持ちいい、楽しいと思えるコースターを追求した新コースター「ZOKKON」。その名称は、このコースターにZOKKONになって、惚れ込んでほしいという思いはもちろん、「ZOKKONをきっかけにジェットコースターの魅力そのものに気づき、ここから同園のFUJIYAMAやド・ドドンパといったジェットコースターの奥深い世界へ入ってきてほしい」という思いがあるといいます。
また富士急ハイランドらしい言葉遊びとして、「点対称に近いような語感・見た目の名称にしたかった」ということ。実際にティザー動画では、ZOKKONの文字が四辺になり、横倒しのNがZになって繋がったデザインも用いられています。「コース上に逆走する部分もあり、行ったり来たりする見た目と『ZOKKON』という点対称に近い語感・見た目がマッチしている」という遊び心も隠れているとか。
SDGsを意識した、エコフレンドリーなコースター
パーク全体でもSDGsへの取り組みに力の入る富士急ハイランドですが、今回「ZOKKON」でも新しい取り組みを行っています。コースター駅舎屋根にはソーラーパネルが設置され、プラットホーム内の一部電力を担っています。
また敷地内の基礎工事過程で富士山の溶岩石が多数掘り出されたため、それらを修景デザインとして再利用しています。山梨県の木であるモミジをはじめとした緑化にも力を入れた結果、コース前半の緑あふれる景観、中盤の建造物やトンネルの中を走り抜けるエリア、後半の地面すれすれの低いコースに荒々しい溶岩石と、乗車中の目にも飽きない展開のある景観が作られています。
待っている間も楽しめる
「ZOKKON」には、待ち時間の間にも楽しめる要素が数多く用意されています。今までの4大コースターではなかった、コースを間近に眺められる、コースター敷地内に位置したキューラインの作りがその一つです。
さらにはライド出口もコース敷地を出るところに設定されており、降りた後もどんなコースをどのように走ってきたのか、眺めながら「ZOKKON」を後にすることとなります。
またキューラインのモニターで流される映像には小ネタが満載。SDGsの取り組みについての実際の情報が流れています。
ゲストが乗るバイクの設定上のスペックも、“自然吸気エンジン”“セミオートマチックをオートマチックに改良したトランスミッション”“アクティブサスペンション”など、かなり細かなところまでこだわった設定が伺い知れます。
フルスクラッチデザインの車体
コースターの車体デザインは新規に富士急ハイランドで行い、0から製作されたものだとのこと。「通常の2輪バイクデザインだとレールの上を車輪を履いて走っていて見た目上の違和感を感じたので、浮遊して走るバイクの設定でイメージしデザインした」とのこと。キューライン内の映像では、羽を広げた形態を垣間見ることもできます。
ゲストが至近距離で目にする計器類のデザインにもこだわり、何層も重なったアクリルで立体感をつけたデザインとなっています。
演出たっぷりの3分間のライドとシンクロした「SEKAI NO OWARI」コラボ楽曲
ステーションを出発すると、トンネルを抜けながら1回目の加速。一気に明るくなる視界が爽快感を演出する幕開けです。トンネルを抜けるとイントロが終わり、早速楽曲はAメロへ入ります。
一つめのカーブを抜け大きく上昇し、切り返しながら下降すると、最初のS字カーブ。リズミカルなカーブとバンクの組み合わせで、自らがバイクを操っているかのような感覚が味わえます。
“がむしゃらに走ってきた道を振りかえる”と歌詞が聞こえてくる中、旋回しトンネルに入ると、行き止まりに向かってランチ加速。傾斜に速度が相殺され、行き止まりギリギリで停止し、コースターは逆走を始めます。歌詞とコースレイアウトのシンクロも感じられる、遊び心のある区間です。
逆走のままホースシューを抜けると、楽曲もサビパートに入り、爽快感満点です。そして、再びトンネルへ。ここはデッドエンドと呼ばれる映像演出のあるスイッチバック地点です。楽曲も一端落ち着いて、エレクトロニックなサウンドの間奏に合わせて編成全体が映像に包み込まれます。
ふたたびサビに入った楽曲とともにトンネルを抜けると最後のランチ。デッドエンドと最初のランチのトンネルの間にある狭いスペースを一気に最大出力で加速します。
大きく登り、ホースシューを抜けて溶岩石で飾られたジグザグヒルへ。ランチ加速分と下ってきた速度でかなりのスピードが出ている中、右に左に地面すれすれを駆け抜けていく、緊張感と心地よいGを感じられる区間です。楽曲も耳なじんできたメロディを繰り返しながら最高潮の盛り上がりで進みます。
そしてブレーキ、フィニッシュ。鏡張りになった、自分がバイクにまたがる姿を見ることができるエンディングゾーンがあり、最後まで演出盛りだくさんの約3分間のライドです。
まるで自分が操っているかのような乗車感
演出もコースレイアウトの引き出しも盛りだくさんの「ZOKKON」ですが、やはり一番の魅力は、まるで自分が操っているかのような乗車感、なのではないでしょうか。
一般的なジェットコースターでは、着席姿勢でハーネスに抑えられ、コースの旋回やバンクに応じて自分の体が振り回されるようなプラスGの働きが主となるレイアウトや、コースターマニアがこぞって楽しむ、上昇・下降の組み合わせで生じるエアタイム、それにともなって起こるマイナスGを楽しませるレイアウトが多くなりがちです。
しかし「ZOKKON」では、腰を落として前方のハンドルに掴まることで低くなる乗車姿勢と、左右の切り返しとバンクの組み合わせが主体のレイアウトが相まって、不快感少なく体がカーブからプラスGを気持ちよく感じられることと、必要以上にマイナスGが生じる、「ジェットコースターが苦手だ」と感じやすい人の多くが敬遠する要素が少ないことで、誰でも親しみやすいジェットコースターに仕上がっています。中でも後半のジグザグヒルで感じる、限界近いスピードでの旋回G、切り返すところでのバンク角の入れ替わる部分のスムーズさは特筆すべき点でしょう。これには、上半身にある程度自由がある乗車姿勢がもたらす視線移動のしやすさも関わっているのかもしれません。
何度でも乗りたい、楽しみ方色々なコースター
自分が操っているかのようなスムーズな乗車感から、多くの人がステーションに戻ってきたときには「また乗りたい!」と感じられるであろう「ZOKKON」。そんな「ZOKKON」の、色々な楽しみ方の一部を担当者に伺いました。
まずは、時間帯です。トンネルの出入りといった日差しの違いで大きく感じ方が変わる部分が多くあるこのコースター。まずは昼間に暗闇のトンネルから一気に日差しのもとへ飛び出す爽快感も味わいたいところです。また、夜には車両のイルミネーションもはっきりと見て取れて、夜しか楽しめない乗車体験があること間違いなしです。
続いては、乗車位置です。カーブ・バンクを伴わない大きなドロップはないレイアウトのため、引き込まれる速度の違いは大きくなく、エアタイムの感じ方の違いも目立ちにくいレイアウトのため乗車感は比較的どの位置でも差はないコースターである「ZOKKON」。しかしながら、「デッドエンドの映像演出の特等席は最後尾」とのこと。バックでトンネルに入り、映像に包み込まれる車両全体が見渡せるのは確かに最後尾の特権です。
最後に「コースに慣れてきたら…」と上級者向きの楽しみ方も教えてくれました。「ジグザグヒルなど切り返しの多い区間で、少し体をカーブの内側に向けて意識的に傾けて乗ることで、よりバイクを操っている感覚が増す」ということらしいのです。これはまさにバイク乗りの代名詞「ハングオン」。バイクでカーブを旋回する際に、シートからカーブの内側方向へ腰をずらして乗車することで、身体の重心をカーブの内側に移動させることで、遠心力に拮抗しやすく、安定した旋回が可能になる…というレーシングライダー発祥のテクニックなのですが、これをいざ試してみると、実に気持ちいいのです。キューライン映像でも流れていますが、コースの少し先を見て、カーブの内側へとワンテンポ早めに視線を送りながらやってみると、完全に気分はライダーそのものです。ぜひお試しを。
誰もが「ZOKKON」になるコースター
ジェットコースターの原点に立ち帰り、コースターの楽しみとは何かを追求した「ZOKKON」。身長・年齢制限も多くの人に利用しやすくなっており、想像以上に誰もを「ZOKKON」にしてしまいそうなこのコースター。ぜひ一度と言わず、何度でも体験してみては。