ジブリパークが、2022年11月1日(火)に開園しました。先行オープンした3エリアの1つ「ジブリの大倉庫」から、南街の世界観をレポート。
倉庫の端にできたジブリパークらしい通路
ジブリパークはテーマパークではなく公園である。ジブリパークの会見などで何度も語られている、テーマパークではない宣言は、既存のテーマパークとの差別化であり、非常にジブリ的な思想を感じる言葉でもあります。
それを強く感じるのが、「ジブリの大倉庫」内にある南街です。文字通り倉庫内の南の端にある細い通路です。
ジブリの大倉庫は、愛・地球博記念公園の屋内プールを改装して作られたエリア。愛知万博当時はマンモスが展示されていたグローバル・ハウスのオレンジホールにあたる部分です。この屋内プールの建物をそのまま活用してジブリの大倉庫が作られています。
ジブリパークの宮崎吾朗監督によると、大倉庫は建て直してエリアを造形した方が簡単だけれど、元からある屋内プールの建物を使用することに意味があるとのこと。そこにジブリパークがテーマパークでない本質、元ある公園にジブリが同居することが表れていると感じます。その中でも印象的なのが「南街」です。
ここは、屋内プールの設備上発生した空間で、その構造を残した結果、どの展示も入らない隙間のエリアとなりました。ここに、“ジブリっぽい”街並みが作られています。
特定のストーリーを持たない空間
“ジブリっぽい”街並みとは、何か特定の映画の世界を再現したのではなく、足を踏み入れた人が『千と千尋の神隠し』っぽいとか、自分の中で好きな映画の世界観を当てはめられるような世界。
赤提灯が並ぶ煉瓦の街並みには、色々な張り紙があり、張り紙をよく読むと、釜爺がスタッフを募集していたり、実際の愛知の美術館のポスターがあったり、想像が膨らむ遊び心でいっぱい。
街並みの中には実際の店舗もあり、駄菓子屋や模型屋、ジブリの語源「熱風」の名を冠した書店でもジブリ関連書籍を購入できます。街の中には、ここにしかないガチャガチャも。
ジブリパーク内の他エリアの展示を模したアイテムが売っていたり、逆に南街のものが他エリアにひっそり置かれていたり、パーク内の繋がりも、歩き回って気付く遊び心です。
空想上の雑多な世界観に、実際の物販が並び、ジブリの世界を作った童話や機械の模型が置かれている、現実の文化が空想の世界を支えている構図が凝縮されているようです。
ここがテーマパークなら、全体のバックグラウンドストーリーが設定されており、どこかで細かく説明されそうなものですが、そこにストーリーを提示しないのがテーマパークでない公園らしさ。他のエリアでも、通路の右側は『千と千尋の神隠し』なのに左側は『天空の城ラピュタ』の飛行船といった、本来別の世界観が同居しなぜか溶け込んでいる空間が広がっています。
テーマパークの原点回帰
南街には、ジブリっぽい世界観があり、遊び心があり、ジブリの文化があり、全てが人々の想像力に任せられている世界です。
そして、そこは無から生まれた場所ではなく、元のプールの構造から生まれた空間。あえてテーマパーク的に言うなら、元の公園が持つ文化的ストーリーをバックグラウンドに持たせたジブリのエリアだと言えます。
公園としての矜持を持つエリアは、チボリ公園などから誕生したテーマパークが原点回帰していく時代をも感じさせる、狭さの中に深い奥行きのある空間です。