2020年10月2日(金)、アドベンチャーワールドに14羽目となるエンペラーペンギンの赤ちゃんが誕生しました。
現在赤ちゃんはバックヤードにて暮らしており、公開については決まり次第発表されます。
「初期人工育雛」で親鳥主体の子育て
エンペラーペンギンの繁殖は体重40kg近くある親鳥が卵をつぶしてしまう事故を防ぐため、孵卵器で卵の様子を見守る手法を取っています。
2020年7月30日に産卵し、赤ちゃんの体重は300gと平均的な体重で生まれました。
従来の方法は、赤ちゃんが無事に卵からかえり成長することを重視して人の手で育てる「完全人工育雛」という手法を取っていました。
しかし、完全人工育雛によって育った赤ちゃんは、人間を親として認識し、成鳥となってもペアを作らず、次の世代の繁殖につながらないことがわかりました。
そこで、卵を親から預かり、孵卵器にて孵化させ、その後、雛の体重がある程度成長するまで人の手で育て、体力をつけてから親鳥へ返す「初期人工育雛」という方法にたどり着きました。
スタッフは親鳥に扮して給餌
生まれて初めて見た動くものを親と認識する」という鳥類の習性を利用し、給餌の際スタッフがペンギン型の帽子を被り、ペンギンの嘴に見立てた手袋を装着します。
声は一切発さずに録音した親鳥の鳴き声を聞かせ給餌します。
親鳥には擬卵を抱かせる
初期人工育雛中、親鳥には擬卵(石灰で作った偽物の卵)を抱かせ、まだ赤ちゃんが生まれてないと思わせます。
赤ちゃんが約500gまで成長したら、そっと擬卵と引き換えに赤ちゃんを抱かせます。
エンペラーペンギンは国内で2館のみ
現在、日本国内でエンペラーペンギンを飼育しているのはアドベンチャーワールドと名古屋港水族館の2園館のみです。
アドベンチャーワールドの14羽の赤ちゃんはすべて同じ両親から生まれており、血統問題が深刻化しています。
未来の繁殖のため2009年より、2園館でブリーディングローンを開始し、今年、名古屋港水族館からやってきた個体とアドベンチャーワールドで暮らしていた個体の間に産卵を確認しました。
今回は無精卵で誕生には至りませんでしたが、この経験を活かし、有精卵に繋がるように取り組んでいます。
分類:ペンギン目 ペンギン科
生息地:南極大陸およびその周辺
学名:Aptenodytes forsteri
英名:Emperor Penguin
食生:魚類、イカ、オキアミなど。
アドベンチャーワールドでは主にオオナゴ、ホッケなどを与えております。
繁殖:南極大陸で繁殖するのは、中型のアデリーペンギンと並んでエンペラーペンギンの2種類だけですが、アデリーの繁殖シーズンが、雪溶け後に岩場が露出する夏場なのに対して、エンペラーペンギンはマイナス60度にも至る冬の氷原で繁殖を始め、約120日間にも及ぶ絶食の中ヒナを育てることから「世界で最も過酷な子育てをする鳥」だと呼ばれています。およそ5歳で性成熟に達します。メスは産卵後、餌を取りに海へ行き、繁殖地に残ったオスは絶食状態で約2か月間卵を抱き続けます。
寿命:約30年
特徴:世界最大のペンギンで体長約120cm、体重約40kgに達し、側頭部と胸部上部の鮮やかな黄色が特徴的です。唯一赤ちゃんに模様があるペンギンでもあり、生まれた直後から換羽を迎えるまで、 白・黒・グレーの三色をしています。成鳥はキングペンギンとよく似ていますが、キングペンギンは体長約90cmと、エンペラーペンギンと比べると小型で、胸部上部が橙色をしていることから区別できます。