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『ズートピア2』日本人アーティストが描いたニックとジュディの心理的表現

2026年1月24日 あとなび

ディズニー映画『ズートピア2』が、国内興行収入130億円を突破する大ヒット公開中。映画製作には、日本人のアーティストも携わっています。

ディズニーのアーティストとして活躍する鳥海ひかりさん

ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオでは、世界各国のアーティストが協力してアニメーションを制作しています。

鳥海ひかりさんは、ストーリーボード・アーティストとして活躍。東京で生まれ育ち、大学入学を機に渡米。カリフォルニア芸術大学で学びながら、ピクサー・アニメーション・スタジオでのインターン、他のスタジオでの制作経験を経て、現在はディズニー・アニメーション・スタジオでストーリーボード・スーパーバイザーとして長編映画制作に携っています。

『ズートピア2』の制作現場で彼女が体感したのは、異なる視点を歓迎し、失敗を恐れず試せるディズニー流のコラボレーション文化でした。

同作にストーリーボード・アーティストとして参加した鳥海さんは、物語を最初にビジュアル化していく役割を担っていました。日本で言えば絵コンテに近い工程で、ディズニーにおいては物語の可能性をできるだけ多く探るために必要な工程だと言えます。鳥海さんは、ニックとジュディが衝突するシーンなど、いくつかの重要なシーンを担当しました。

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ニックとジュディの関係性を描く

鳥海さんは、ニックとジュディふたりの価値観がぶつかり合った矢先に、小屋が真っ二つに割れ、物理的にも引き裂かれてしまうという、心理的な隔たりに、目に見える距離をどう重ねるかを考えながら、工夫に工夫を重ねていったそう。感情の動きを言葉に頼らず伝えるために、画面構成やタイミングを何度も描き直し、よりエモーショナルな瞬間として成立させることを目指したと言います。

「ボツになることは失敗ではありません。ストーリーボードは完成形ではなく、あくまで“設計図”なんです。」

ストーリーボード・アーティストの仕事は一枚の完成度を評価するものではありません。ときには、ひとつのシーンに対して何十、何百というカットを描くこともあるようで、構図やテンポ、キャラクターの表情や動きなど、わずかな違いを試しながら、とにかく量を出していくことで、物語として機能する形を探っていきます。

「書いている絵の90%は、ゴミ箱にいってしまいます。例えばシーンがカットされても、それが無に帰すわけじゃないんです。あの場面で、あの感情の出し方はうまくいっていたよね、というのがみんなの中に残っている。それを次のシーンでやり直してみよう、という話になることもあります」そう語る鳥海さんは、制作現場でのチームワークを、リレーのようなものと話します。

「”映画づくりはリレーのようなもの”だと思っていて。私が一生懸命走って届けたバトンを、次の人が受け取り、また全力で走る。その積み重ねが、一本の映画になるんです。こんなに大きなプロジェクトなのに、みんなが同じ方向を向いて本気でつくっているんです。完成した作品をみんなで観て、笑って、『よかったね』と言い合えたとき、このメンバー全員が関わっていたんだと思うと、すごいなって。これだけ多くの人が、本気でバトンを渡し続けた結果を映画館で観られるなんて、本当に楽しい仕事だと思います。」

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日本の感覚も組み込まれた作品に

ディズニー・アニメーションの制作には、専門分野も、考え方も異なる非常に多くのメンバーが携わり、それぞれの立場から物語を見つめています。

鳥海さんが実感しているのは、ディズニーではそれぞれが持つ感性や表現を、ひとつの“視点”として歓迎する文化が根づいているという点です。

鳥海さんが日本で育つ中で身につけてきた情緒や演出の感覚も、制作の中に組み込まれてきました。「最初は、日本のアニメっぽい絵柄が、自分の弱点だと思っていたんです。仕事を始めた頃から、自分が弱点に感じていたことがもしかしたら強みかもしれない、と感じる場面が増えてきました。アニメって本当に世界的に人気があって、いま最前線で働いている監督や制作のキーメンバーにも、アニメを観て育ち、影響を受けてきた人がすごく多いんです。」

日本アニメならではの誇張やリズム感は、キャラクターの感情を強く伝える場面で、思いがけず力を発揮することもあります。

「そういう部分が、結果的に表現の個性として受け取ってもらえることが増えてきて。むしろ、強みとして活かせる場面が多くなったと感じています。言語やカルチャーを超えた演出で、自分ができることはやろうと思ったんです。」

ディズニーでは、そうした一人ひとりの感じ方や考えを、丁寧にすくい上げる仕組みが用意されているそう。「制作の途中では、ストーリーボードをスタジオ全体で共有する内部スクリーニングが行われます。チームメンバーが、まだ途中段階の試案を見ながら、どこがよかったか・どう感じたかを率直に言葉にします。監督はそのすべてに目を通した上で全体の調整をしていきます。」

自分の意見や感性が作品づくりの一部として受け入れられる。こうして持ち寄られた多様な視点によって、作品は磨かれ続け、輝きを増していきます。

国境を越えたコラボレーションで作られる作品

『ズートピア2』が世界中で大きな反響を呼んでいる背景にも、異なる視点を歓迎し、それぞれの個性を物語の力に変えていく制作の積み重ねがあります。ひとつの正解や表現方法を押し付けないディズニーのカルチャーは、鳥海さんが自分らしく仕事に向き合うための土台となっています。

異なる視点を歓迎し、アイデアを持ち寄りながら議論を重ね、よりよい形へと磨いていく。国境やバックグラウンドを越えて、コラボレーションを重ねていく。ディズニーで働くということは、こうした文化の一員として、自分らしく挑戦しながら、次の誰かへと物語のバトンを手渡していくこと。その積み重ねが世界中の人にスクリーンを越えて広がるキャラクターや物語を生み出しているのです。

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※記事の内容は取材時の情報です。掲載している情報が変更になっている場合があります。
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