実写版『リロ&スティッチ』が劇場公開中。大ヒットを記録したディーン・フライシャー・キャンプ監督と、プロデューサーのジョナサン・アイリック&ダン・リンが現代の観客に向けて物語を再構築したディズニー最新作について語りました。
実写ならではの変更点
「実写化にあたり、アニメーション作品に愛情を込めて敬意を払いながら、制作を進めました。アニメーションと実写は完全に違うものであるということを認識しつつも、実写だからこそできることもあれば、アニメーションだからこそできる表現もあります。私たちの目標は、アニメーション作品と共鳴するような作品を作ることであり、そのためにも、アニメーション作品の世界観を壊すことなく、少し現代的な要素も取り入れました。」とフライシャー・キャンプ監督は語ります。
本作の制作陣は、文化的なニュアンスや物語に内在する価値観を大切にしながら、大人気のアニメーション作品の実写化という課題に直面しました。過去に実写版『アラジン』のプロデューサーを務めたアイリックは、「常に意識していたことがひとつあるとすれば、『絶対に台無しにしてはいけない』ということ」と笑顔で語りました。
「これは、常にファンからインターネットなどで私たちに寄せられるアドバイスでもあります。ただし、ファンは“シーンを一つひとつ忠実に再現する実写リメイク”を求めているわけではありません。ファンが求めるのは、制作陣がアニメーション作品を愛し、深い愛情と考察をもってすべての決定を行うという安心感です。例えば”ハワイアン・ローラーコースター・ライド”のような重要な楽曲を扱う場面は、私たち自身もひとりのファンとして、作中に使われていなかったらがっかりするだろうと思ったんです。俳優が演じる実写作品として、どうすればストーリーを自然に展開できるか、そして新しい世代に向けて新しい体験を届けられるかを模索しました」とアイリックは語ります。
また「実写のストーリーラインを構築するにあたり、キャストが表現すべき感情や物語に目を向ける必要がありました。まずナニとリロの姉妹の関係について、そして両親をなくすこと、ハワイの社会福祉サービスで姉妹が一緒に居続けることができるかといった現実に即してじっくり考えました。それが、実写化にあたって(アニメーション作品との)違いに繋がったと思います。」
アニメーション版は時代を先取りしていた
フライシャー・キャンプ監督は、「アニメーション版『リロ&スティッチ』は、ある意味で時代を先取りしていた作品でした。物語は現代社会が舞台なんです。おとぎ話の国でもなければ、ディズニープリンセスも登場しません。むしろ主人公はディズニープリンセスとは真逆の存在。だからこそ実写版では、特にリロのような人間のキャラクターたちの物語をより深く掘り下げて描くことにこだわりました。ハワイで育つ姉妹2人の、実際にありうる経験としてのリアルな物語を描くことができたと思います」と振り返ります。
本作の制作ではアニメーション作品に関わったスタッフの協力がありました。アニメーション作品の監督であり、今回もスティッチの声を担当しているクリス・サンダースももちろん本作の制作に参加しています。さらに、アニメ版で声優を務めたエイミー・ヒル、ティア・カレル、ジェイソン・スコット・リーの3人が、今回の実写版では新たなキャラクターとして出演していることにも注目です。
「アニメーション作品の制作者たちは、当時の『リロ&スティッチ』に当然誇りを持っていて、本作の制作にも熱心にサポートしてくれました。本作を手掛けた私たちとしても、アニメーション作品を成功に導いた制作者たちを、制作プロセスに積極的に巻き込むよう努めました。」とフライシャー・キャンプ監督は語りました。
クリス・サンダースが声優を続投
「アニメーション作品と同じく本作でもスティッチの声優はクリス・サンダースです。クリスは素晴らしいクリエイターで、もともとスティッチを描き、アニメーション作品の脚本を書き監督した、まさにスティッチの生みの親です。クリスが制作陣として関わっていない作品でも、常にスティッチの声優として作品に関わり続けていました。つまり彼こそがスティッチなんです。だから、本作もクリスに担当してもらわなければならないと感じていました。3Dのスティッチが実写でどのように見えるかということを始め、彼は制作陣に多くの助言を提供してくれました。」とアイリックは語りました。
両作品でアニメーション・スーパーバイザーを務めたエリック・グアリオーネはもちろん、アニメーション作品でスティッチのリード・アニメーターを務めたアレックス・クーパーシュミットなど、その貢献は非常に貴重なものでした。「アニメーション作品を手がけたスタッフの熱意とサポートなしではこの映画は決して完成しなかったと思います。」とフライシャー・キャンプ監督は語りました。
映画の”オハナ<家族>”がどんどん増えていきました
制作の長いプロセスで最もチャレンジングだった点について、アイリックは次のように述べています。「アニメーション作品を尊重することも、その一つだったと思います。もっと良くできるんじゃないかと考えを巡らせ、できるだけ多くの人をパートナーとして迎え入れるよう努めました。クリス・サンダースにスティッチが正しいかを確認してもらったり、ハワイのコンサルタントに映画のハワイらしさが正しいかを確認してもらったり、スティッチのアニメーションが適切に感じられるように、より多くのアーティストやアニメーション担当に来てもらったり、あらゆる段階でより多くのパートナーを巻き込みました。本当に最高の映画を作るために、映画の”オハナ<家族>”がどんどん増えていきました。ファンの期待に応えることが、最大のチャレンジだったと思います。そして最終的に私たちはそれを実現できたと感じています。」
そうした思いからアイリックは、「実写版『リロ&スティッチ』は、ぜひお近くの大きなスクリーンで体験してほしいです。これまでに見たことがないような、リアルでオーセンティックなハワイとその大自然の魅力が詰まっていて、夏の始まりにぴったりの作品です。この映画はまさに感情のジェットコースター。楽しくて、カオスで、でも心が温かくなる。映画館で他の観客と一緒に笑ったり泣いたり、きっと思い出に残る素晴らしい体験になると思います」と語りました。
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